歯ぎしりは大人から子どもまで多くの方に普通にみられます。
しかし、他の方に「歯ぎしりがうるさい」といわれると、ちょっと考えてしまいますよね?
また過度な歯ぎしりは迷惑なだけでなく、さまざまな障害や弊害をはらんでいます。歯ぎしりを気にされている方、お悩みの方はお気軽にご相談ください。
寝ている時や起きている時を問わず、歯をすり合わせたり、噛み締めたり(くいしばり)する咬み合わせの異常習癖です。ブラキシズム(Bruxism)とも言い、歯と歯による過剰な接触・過剰な圧力により、歯・歯肉・歯槽骨・顎の骨や周囲の組織に障害を起こすことがあります。
咬む力は強い人で70kgを超える、とても大きな力です。
歯ぎしりは、その大きな力が持続的に加わるため、硬い物を食べるときのように瞬間的に強い力がかかる場合よりも、ずっと大きな影響が出てしまいます。
ちなみに、子どもの歯ぎしりは成長過程において顎の位置決めなどのために行われる、ごく自然で必要なこととも考えられています。
歯がすり減る
歯ぎしりによって歯どうしが激しくこすりあわされ、硬い工ナメル質が大きくすり減った状態です。
歯の内部の象牙質も見えてしまっています。
象牙質が露出し、食べ物や冷たい空気でもしみる状態です。
残っているエナメル質の部分も薄くなって強度が落ちてしまい、歯の割れも起こりやすくなります。
さらにすり減ると歯髄(歯の神経)が露出してしまいます。
歯髄が露出していると細菌に感染しやすくなり、歯髄の炎症も起こりやすくなります。
歯髄の炎症は歯髄が死んでしまう原因になります。
また、歯根部(歯の根の先端)に炎症が起きることもあります。このような場合、腫れたり、噛むと痛みが出たりします。
歯がしみる(知覚過敏)
虫歯でもないのに歯がしみる!
これは過度な歯ぎしりによって歯がすり減って、象牙質や歯髄が露出していると起こります。
また、歯のくさび状欠損も歯がしみる原因になります。
噛んだ時の力(応力)が集中する歯頸部(歯冠部と歯根部の境)はくさび状欠損(破損)が起こりやすく、歯ぎしりのある方によくみられます。
被せ物や詰め物がはずれる
被せ物や詰め物は接着剤を使って接着、固定します。
そのため、力のかかり具合によっては、
被せ物や詰め物がはずれてしまうことがあります。
歯がわれる
歯ぎしりによる強大な力は歯そのものを割ってしまうことがあります。
特に、虫歯などで歯髄(歯の神経)を除去した歯は強度が落ちているので、いっそう割れやすい状態です。
割れてしまった歯は治療の施しようがほぼないので、残念ながら抜歯するケースが多くなってしまいます。
歯周病に侵されている歯に、歯ぎしりによる大きな力が加わると、急速に歯肉や骨(歯周組織)の状況が悪化することがあります。
歯周病と歯ぎしりの相乗作用
歯ぎしりは、歯や歯周組織に異常をきたすだけでなく、顎関節や顔面の筋肉などに悪影響を及ぼすことがあります。
頭痛や肩こりなどの不定愁訴と関係していることもあります。
顎のずれ
顎関節症(顎の障害)
ロの周囲の筋肉の痛み
例えば【骨隆起(外骨症)】
骨隆起によって歯ぐきが膨らみ、触れると硬く骨ばった状態です(写真の矢印)。
これは遺伝や咬みあわせ、強い咬合力などにより、骨が部分的に増殖したもので、上あごの中央部、下あごでは犬歯の内側付近にできることが多いようです。
病的なものではないので、周題がなければ取り除く必要はありませんが、入れ歯製作の障害になったり、食事に影響するような場合には、外科的な除去が必要になります。
歯ぎしりは危険性はわかっているものの、
以下のような理由から発見が難しい悪癖(非機能性咬合習癖の一形態)です。
歯ぎしりはなぜ起きるのか?
そのメカニズムはまだ十分解明されていません。
歯ぎしりの原因として、以下の2点などが推測されていますが、必ずしも起きるわけではありませんし、それを見つける検査も困難です。
局所的因子
唆みあわせの異常など口の中の原因から起こる歯ぎしり。
全身的因子
日常生活でのストレスなどの精神的因子から起こる歯ぎしり。
歯ぎしりは無意識にしてしまうものです。
夜寝ている時にギリギリと音を立てる人は、周囲の人から指摘されるかもしれませんが、ほとんどの場合、本人は気づいていないようです。
起きている時にする咬みしめの場合も気づいていない方が大半です。
ある研究調査では成人の80%にもおよぶ方が程度に差はありますが歯ぎしりをしていると結果が出ています。
歯ぎしりしていても音が鳴らない場合もある
日中の咬みしめも無意識のうちにしている
ストレスが要因の一時的な歯ぎしりもありえる
歯ぎしり(ブラキシズム)の確定診断には専門的な医療機関での睡眠時ポリグラフ検査が必要で、簡単にできる検査ではないこと、日中の咬みしめは検査できないことなどから、判定が困難です。
当院では歯や歯周組織の状態から歯ぎしりの可能性をお伝えしています。
しかし多くの方は自覚がなく、半信半疑のまま帰宅され、あらためて家族に聞くと「歯ぎしりをしていると言われた」という方、自分で意識してみて初めて咬みしめていたことに気づいたという方が大勢おられます。
歯ぎしりは、その特徴(動作形態)によって分類されています。
ここでは歯ぎしりの分類を特徴とあわせて簡単にご案内します。
歯ぎしりはなぜ起きるのか?
そのメカニズムはまだ十分解明されていません。
歯ぎしりの原因として、以下の2点などが推測されていますが、必ずしも起きるわけではありませんし、それを見つける検査も困難です。
異常な咬耗
歯がすり減って咬みあわせ面が真っ平ら
人の歯は年齢を重ねるにつれ、すり減ります。
しかし歯ぎしりをしている年月が長いほど、
また強い力で歯ぎしりするほど、
歯のすり減り方は極度に進行します。
正常な歯並びと比べると違いがよくわかります。
歯の根元のくぼみ(くさび状欠損)
歯ぎしりによる大きな力は歯の根元(歯頸部:歯冠部と歯根部の境)に集中します。
そのため根元の部分の歯質が失われてくぼんだようになる(くさび状欠損)ことが多々あり、歯がしみる(知覚過敏)原因となります。
無意識のうちに咬みしめてしまうタイプで、睡眠中・覚醒中(起きている時)にかかわらず起きます。
咬みしめるだけでは音は鳴りませんが、わずかに横に動かすこともあり、その場合は歯ぎしり音がすることがあります。
骨隆起
骨隆起は咬みしめをよくする人に多く見られます。
病的なものではないので取り除く必要はありませんが、入れ歯の障害や食事に影響するような場合は外科的に除去することがあります。
頬・舌粘膜の圧痕
上下の歯をいつも咬みあわせていると、頬の内側や舌の横に白っぽい歯型の跡がつくことがあります。
奥歯がとても短い
咬みしめをする人によく見られるのが、奥歯の歯の高さが短くなっていることです。
歯の破折
咬みしめ型は歯に大きな圧力がかかるので
歯の破折がよく見られます。
歯の動揺
歯を支える骨が減ると、歯ぎしりによって歯がゆさぶられるようになります。
写真のように指をあてて、横にギリギリやってみましょう。動揺している歯があれば、指で動きを感じることができます。
咀嚼筋のこわばり
咀嚼筋は咬むときに働く筋肉の総称で側頭筋や咬筋などがあります。
大きな咬みしめ力はこれらの筋肉に影響を与えこわばりや痛みに繋がることがあります。
肩こりや頭痛
咬みしめ型の人は高頻度で肩こりや頭痛を併発しています。
歯列全体ではなく、ある一定の場所だけでキリキリこすりあわせるタイプで、犬歯やその1・2本後ろの歯の先端だけがすり減っていることが多いようです。
就寝中の歯ぎしりがほとんどですが、きしませるので、大きな音が鳴る場合が多いようです。
ファセット
普段、咬むことがないような場所がすり減っていて、歯をずらすと上下がびったりとあわさる部分があります。
このようなすり減りをファセットと呼びます。
きしませ型の多くの方にピカピカに光ったファセットがあります。
きしませてみて音が出ますか?
歯をいろいろな場所できしませてみましょう。
音が鳴れば、そこで歯ぎしりをしているかもしれません。
歯ぎしりはこれまで案内してきた3タイプのうち、どれか1つだけの単独型と、2つ以上のタイプの歯ぎしりをしてしまう混合型があります。
複数の歯ぎしりをすり混合型はお口に現れる変化もさまざまです。
混合型の例
日中は咬みしめ型の歯ぎしり、就寝中はきしませ型の歯ぎしりのある方
就寝中に常に咬みしめていて、時々ギリギリと歯ぎしりをする方、など
歯ぎしりの治療では、まず咬み合わせや咬合の不均衡などを検査し、必要な場合はそれらを治療します。
その後、マウスピース形状のナイトガードを製作しますので、就寝中に使用していただきます。
ナイトガードは保険適用で製作できます。
ナイトガードについて
ナイトガードは就寝中の歯ぎしりや咬みしめから歯や顎骨を守り、歯ぎしり特有の耳障りで“うるさい異音”を防ぐ装置です。
毎晩きちんと使わなくてはなりませんが、歯ぎしりを防止する効果は抜群です。